近くて遠い惑星「火星」の環境変化の原因が判明したようです。
35億年前の火星で、フランス国土の半分ほどの大きさの火山が膨大な量の溶岩を噴出したため、
その重さで火星の地殻とマントルの位置にずれが生じたとの研究結果が2016年3月2日に発表されました。
この噴火の影響はすさまじく、火星のもともとの北極と南極が、かつてあった位置にはもはや存在しないことを意味しているとのこと。∑o(*’o’*)o
英科学誌ネイチャーに掲載された研究論文の主執筆者で、仏パリ第11大学の地形学者である「シルバン・ブーレー氏」はAFPの取材に対し、
乾いた河床や地下氷床が予想外の位置に存在するなどの、科学者らを長年悩ませてきた火星の謎の数々は、今回の研究結果で説明がつくと語りました。
ブーレー氏は「もし同様の位置変動が地球上で起きたら、パリは極圏内に移動することになる」、
また「フランスではオーロラが観測され、スーダンではワイン用ブドウが栽培されるだろう」と語っています。
論文によると、数億年間続いた火山性の隆起によって、火星表面が20~25度も傾いたそうです!
火山から噴出した溶岩流は、広さ5000平方キロ、高さ12キロ以上に及ぶ「タルシスドーム」と呼ばれる溶岩台地を火星上に形成しました。
↑3Dで見た火星タルシス地方の火山
「タルシスドームは、火星の大きさと比べると特に、途方もなく大きい。まさに常識外れだ」とブーレー氏は語っています。
重量が10の18乗トンに及ぶこの巨大な露頭が地表上部に形成された結果、
火星表層部の2つの層、地殻とマントルが、まるでモモの皮と果肉が種を軸に移動するように、旋回移動したとのこと。
↑難しい表現ですが、とにかく凄いことが起きたんですね・・( ̄△ ̄;)
2010年に発表された理論的研究で、タルシスドームを火星から取り除くと、火星の自転軸を中心とする位置変動が起きることがすでに示されていたようです。
もし、当時の火星に生命体がいたとしても、溶岩流に飲まれたとしたら、その痕跡を探すのは容易じゃないかも・・
ところで何故、突然謎が解けたのでしょうか?
ブーレー氏と共同研究者らが、最新のコンピューターモデルによるシミュレーションの観測結果等を用いて比較したところ、
これまで説明がつかなかった火星上の多くの現象が、突如として意味を持ち始めたようです。
以下はブーレー氏がAFPに語った見解です。
↓
「なぜ(現在は乾いた河床となっている)川が今の位置に存在するのかという疑問に、科学者らは答えを見つけることができなかった。
その位置にあることに、規則性が全くないように思われるのだ」
↑欧州宇宙機関が公開した火星表面にみられる洪水跡「マンガラ谷」(2008年9月26日公開)
「だが、表面での位置変動を考慮に入れると、川は全て同じ熱帯地域に列をなすことになる。
同様に、水が凍結した巨大な地下氷床も、極地域により近いところに位置しているはずだ。
すでにお分かりのように、昔々はそうだったのだ。」
と語っています。
タルシスドームが「新たな」赤道上に位置している理由も、今回の新説で説明可能だとのこと。
火星が平衡状態を取り戻すためには、まさにその位置にくる必要があったと考えられるわけですね。
さらに、標準とされる年代学では、火星の川はタルシスドームより後に形成されたと考えられているようですが、今回の研究結果はこれに対しても異を唱えているそうです。
これら太古の水流の大半は、巨大な溶岩原が存在しなくても、火星の南半球のクレーター高地から北方にある低地の平原に向けて流れていたと考えられると、研究は結論付けているとのこと。
これからも徐々に火星の謎が解明されていくことを期待したいと思います。
コメント