太陽の60億倍の重さがある超巨大ブラックホールから、
ジェットと呼ばれるガスが光速に近いスピードで激しく噴き出しているのを観測したと
日本と韓国の共同研究チームが2016年3月12日に発表しました。
観測したのは、地球から5440万光年離れたM87銀河の中心にあるブラックホールで、ジェットの長さが5千光年もあることが知られています。
↑ブラックホールから噴出するジェットの想像図
チームは、国立天文台が岩手県や鹿児島県、沖縄県などで運用する電波望遠鏡4台と、韓国にある3台の計7台で合同観測を実施。
2013年12月から約半年かけて、ブラックホールに極めて近いジェットの根元部分を詳しく調べたとのこと。
その結果、噴出直後のジェットが広がる速度は光速の80%以上と判明したそうです。
※これまではジェットはゆっくり噴出し、その後、光速近くにまで加速すると考えられていました
↑電波望遠鏡で観測したブラックホールから出るジェットの根元部分。
重力の強いブラックホールには周囲からガスが落ち込む一方、落ち込まなかったガスは重力を振り切って噴き出し、ジェットが形成されています。
ところで・・・光さえも脱出できないブラックホールからどうやってガスが噴出できるのでしょうか???
【落ち込まなかったガスは重力を振り切って噴き出し、ジェットが形成されています】
↑
この部分について、わかり易い解説を見つけたので、載せておきます。
↓
ブラックホールに一旦吸い込まれれば光すらでてこれなくなります。
※ブラックホールには、事象の地平面という境界面があり、そこから中に入ると光ですら出ることは出来ません。
しかし、今回紹介したガスはブラックホールから出ているのではなく、ブラックホール境界の近く(事象の地平面より外)からでていると考えられています。
ブラックホールに吸い込まれつつあるガスはブラックホールの周りにグルグルと回転する円盤を形作る事がわかっています。
これを「降着円盤」と呼んでいるそうです。
降着円盤内のガスは、なかなかブラックホール本体にたどり着けず同じ所をぐるぐる回り、
ガス同士の運動エネルギーのやりとり(摩擦など)により円盤の内側が高温になっていきます。
ガスが高温になれば気体は高速になりますから、降着円盤と垂直方向に吹き出します。
↑
これがジェットとのことです。
ガスの速度がブラックホール周辺(事象の地平面より外)の脱出速度を超えれば、ガスは外側へと噴出することができ、
越えていなければまたブラックホール周辺に戻ってきて降着円盤に飲み込まれるようです。
ようするに、ブラックホールからガスが出ているのではなく、
あくまでも周辺(事象の地平面より外)にあるブラックホールに落ちきれなかったガスが行き場を失って吹き出しているようですね。
今回の観測の成果により、ブラックホールの謎の一つであるジェットが生まれる仕組みの解明に役立つそうです。
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